2年ぶりの弥彦決戦〜寛仁親王牌開幕!〜
2026.10.09
いよいよ今年も、寛仁親王牌の幕が開く。
10月9日から12日までの4日間、弥彦競輪場を舞台に「第35回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」が開催される。

弥彦での寛仁親王牌は2年ぶり。
独特の雰囲気を持つ弥彦のバンクに、全国からトップレーサーが集結する。
初日の理事長杯、特別選抜予選から激しい戦いが予想され、シリーズの主導権を握るための駆け引きが、初日から繰り広げられるだろう。
昨年の大会では嘉永泰斗がGI初優勝を達成した。

これまでタイトルに届かなかった選手が、たった4日間で一気にGI王者へ駆け上がる。
寛仁親王牌には、そんなドラマがある。
過去を振り返っても、金子貴志、市田佳寿浩、稲垣裕之など、この大会をきっかけに大きな飛躍を遂げた選手は少なくない。
今年も実績十分の選手が中心になるのは間違いない。
しかし、今回はあえて「誰もが知るスター」だけではなく、私が気になる選手たちに目を向けてみたい。
中釜章成〜近畿の新たな存在感〜
まず注目したいのが中釜章成だ。

近畿の大物機動型の陰に隠れがちだが、29歳の113期は着実に力をつけている。
今年はGIの舞台でも存在感を見せており、強力な自力型がそろうビッグレースでも戦える力を身につけてきた。
中釜の魅力は、展開に応じて自分から動けるところ。
GIでは単純な先行勝負だけでは厳しい。位置取りから仕掛けまで自在に組み立てられるタイプは、展開ひとつで一気に浮上する可能性がある。
近畿のラインがどう組まれるかにも左右されるが、番組次第では車券の軸として考えてみたい選手だ。
後藤大輝〜若さが生む一撃〜
もう一人、若手で気になるのが後藤大輝。

まだGIでの実績という点では上位陣に及ばないが、ビッグレースでも着実に存在感を高めている。
GIの大舞台では、実績のある選手同士が互いを意識することで、レースが想像以上に流動的になることがある。
そんなときに若い自力型が思い切って仕掛ければ、一気に展開を動かす可能性がある。
後藤はまだ、GIで常に人気を集めるような存在ではない。
だからこそ、人気以上に走る余地がある。
昨年の嘉永泰斗に続いて、今年も新しいGIスターが誕生するなら、このあたりの若手から出てきても不思議ではない。
杉浦侑吾〜勢いを侮れない存在〜
関東勢では杉浦侑吾にも注目したい。

今年は安定した成績を残しており、勢いという点では見逃せない存在だ。
もちろんGIは普段のレースとはまったく違う。
それでも、GIだからこそ直近の調子は重要になる。
実績だけでなく、脚力、仕上がり、展開への対応力。
この3つが噛み合えば、伏兵が上位に食い込むことは十分にある。
関東には強力な選手がそろうだけに、その中で杉浦がどんな位置を取り、どんな走りを見せるのかにも注目したい。
まだ大舞台で全国的な知名度を得ている選手ではないからこそ、今回の寛仁親王牌は大きなチャンスになる。
強豪が互いにけん制する展開になれば、思い切った仕掛けが流れを変える可能性もある。
「人気薄だから面白い」のではない。
今の勢いと展開次第で、上位に食い込むだけの力があるからこそ注目したい選手だ。
菊池岳仁〜地元の期待を背負うスピードスター〜
もう一人、今回の寛仁親王牌で見逃せないのが、長野の菊池岳仁。

菊池は117期、26歳。持ち味は、スピードを生かした積極的な先行力だ。自転車競技で培ったスピードを武器に、主導権を握って押し切る走りは大きな魅力。近年はまくりにも威力が出ており、仕掛けの幅も広がっている。
そして、今回の舞台は弥彦。
菊池は今大会、地元から唯一の参加選手として紹介されている。
新潟県の選手ではないものの、地元地区の期待を背負って強豪に挑む立場だ。
大舞台で簡単に勝てる相手はいないが、だからこそ自分の持ち味をどこまで発揮できるかに注目したい。
GIでは、実績のある選手同士が互いを警戒し、仕掛けのタイミングが難しくなることも多い。
そんな中で、菊池が迷わず前へ踏み込めば、レースの流れを一変させる可能性がある。
先行主体の組み立てを貫くのか、それとも展開を見極めてまくりを繰り出すのか。
大切なのは、強豪を相手にしても自分の走りを崩さないことだ。
これまで寛仁親王牌には3度出場しているが、決勝進出はまだない。
今回はその壁を破り、さらに上のステージへ進めるか。
若さとスピードを武器に、菊池岳仁が弥彦の大舞台でどんな走りを見せるのか、注目したい。
吉田拓矢〜弥彦で静かに燃える闘志〜
そして今回、あえて最後に名前を挙げておきたいのが吉田拓矢だ。

もちろん、「伏兵」と呼ぶような選手ではない。
S級S班として確かな実績を持ち、今年もビッグレースで結果を残している。
ただ、今回の吉田には、成績だけでは語れない注目ポイントがある。
舞台は弥彦。
吉田にとって、ここは特別な場所だ。
2015年、デビュー戦を走ったのがこの弥彦競輪場だった。
そこから11年。
新人選手として最初の一歩を踏み出したバンクに、今度はS級S班として戻ってくる。
そしてここは、長年この地をホームバンクとして走り続けてきた諸橋愛にとっても特別な場所。

地元ファンの声援を背に数々の激戦を繰り広げてきた弥彦には、関東の選手たちにとって独特の空気がある。
そのバンクで、今回は吉田が戦う。
前検日に吉田自身も、弥彦について「デビュー戦で走ったバンクなので思い入れがあります」と話している。
デビューしたばかりの頃に見た景色。
そこから積み重ねてきた11年間。
タイトルを争う立場になった今、同じバンクに戻ってきた。
華々しく「地元の主役」と騒がれるわけではない。
それでも、弥彦という地で静かに闘志を燃やしている。
そんな姿を想像したくなる。

今年の吉田は、自ら動いて勝つだけではない。先行選手の後ろで仕事をし、最後に自ら勝負することもできる。
初日は眞杉匠の番手を回る予定。
関東の強力なラインの中で、どのタイミングで勝負に出るのかは大きな見どころになる。
「弥彦だから吉田」という単純な話ではない。
これまで積み重ねてきた実績があり、そのうえで思い入れのあるバンクを走る。
そして、そこには長年にわたって諸橋愛が刻んできた歴史もある。
その歴史を背負う必要はない。
ただ、弥彦という特別な場所で、自分自身の新しい歴史を刻めばいい。
静かに走って、最後に一番いいところを持っていく。
そんな展開があっても驚けない。
弥彦で、新たな物語が始まる
寛仁親王牌は、過去にも数々の「悲願」を生み出してきた。
長年タイトルに届かなかった選手が、ここで一気に頂点へ駆け上がる。
昨年の嘉永泰斗も、その一人だった。

だからこそ、今年も実績だけで結果を決めつけることはできない。
初日の位置取り。
ラインの結束。
若手の思い切った仕掛け。
そして、勝負どころでのベテランの判断。
4日間の中で、さまざまな要素が絡み合って一つの頂点へ向かっていく。
10月8日の前検日は好天にも恵まれ、多くの選手がバンクへ入り、入念に感触を確かめた。
選手たちはすでに戦闘モードに入っている。
2年ぶりの弥彦。
昨年は嘉永泰斗が新たなGI王者となった。
今年は誰が、その座へたどり着くのか。
そして、この4日間をきっかけに、誰の名前が新たに競輪ファンの記憶へ刻まれるのか。
弥彦のバンクには、これまで数々の物語が刻まれてきた。
今年もまた、新しい歴史が生まれる。
10月9日。
第35回寬仁親王牌が、いよいよ幕を開ける。

